新刊『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』書評紹介

2022年4月10日「I女のしんぶん 」

評者: 白崎朝子(ライター)

2022年04月5日 コンシューマーネット   consumernet.jp 

https://consumernet.jp/?p=9059

2022年4月2日  東京新聞/中日新聞  朝刊

評者: 寸評

20221年1月25日

[本]のメルマガ  814号

評者: 小谷敏 大妻女子大学人間関係学部教授

———————————————————————-

■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏

———————————————————————-

ノーム・チョムスキー+ロバート・ポーリン 早川健治訳『気候危機とグロー

バル・グリーン・ニューディール』那須里山舎 2200円+税

「人新世」ということばを耳にするようになりました。人間の活動が地球環境

に決定的な影響を及ぼすようになったことを意味することばです。異常気象が

常態化していることは、われわれが日々実感しているところです。炭素排出量

を2050年までにゼロにしなければ、産業革命以前に比べて地球の平均気温

は大きく上昇し、酷暑と海面上昇とによって、多くの地域が居住不能になって

しまう。地球環境問題の専門家の一致した見解です。しかしながら、世界の権

力者たちが、気候危機の問題に真剣に取り組んでいるようにはみえません。

化石燃料を代替エネルギーに置き換え、断熱性の高いビルを建築し、ハイブリッ

ドカーを普及させる。これらは炭素排出量ゼロ社会の実現のために必須の事柄

です。そのためには巨額の投資が必要となります。高名な言語学者ノーム・チョ

ムスキーと、経済学者のロバート・ポーリンは、気候危機問題解決のための方

策として、グロバール・グリーン・ニューディール(以下GGN)を提唱していま

す。大恐慌の克服のためにニューディール政策を打ち出したルーズベルト大統

領に倣って、地球規模で公共事業を展開する必要性を二人は説きます。

GGN実現のコストは、安価なものではありません。全地球のGDPの2.5%

が必要になります。その財源をどうするのか。二人は、1.炭素税、2.軍事

予算からの資金移転、3、グリーン債による調達、4.化石燃料への補助金か

らの移転、をあげています。炭素税の75%は、全世界一律に払い戻されます。

南の貧しい人たちには大いなる福音となるはずです。これらの資金は、化石燃

料の廃止に伴って打撃を受ける、国や地域、そしてそうした職業に従事する人

々の救済のためにも用いられます。完全雇用の実現もGGNの目標です。

市場の恣意に委ねることを最善とする新自由主義に、気象危機を克服する力は

ありません。そして、その主張の多くに共感すると言いながらも、脱成長論に

も二人は懐疑的です。その証左として彼らがあげるのが日本です。この30年

間ゼロに等しい経済成長を続けてきた日本でも、みるべき脱炭素化は進んでい

ないのですから。南の世界の貧困を廃絶し、先進国においては完全雇用を実現

し、化石燃料に依存する社会からの犠牲を伴わない、「公正な移行」を世界中

で可能にする方策も、脱成長論の中から出てくることはありませんでした。

超大国アメリカでは、気象危機を全否定するトランプ前大統領が、いまだに熱

狂的な支持を集めています。経済的な窮境に置かれた人々が、トランプのよう

な狂った政治家に支持を与えている。二人が完全雇用を実現する必要を説く所

以です。新型コロナウイルスのパンデミックも、気候変動と無縁ではありませ

ん。それでもこの国の政治家たちの気候危機問題への関心は極めて薄い。絶望

的にもみえる状況の中、2019年の若者たちに主導された気候ストライキの

ような、事態を直視する人々が起す運動に対して二人は期待をかけています。

◎小谷敏

大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ

ノが書けることに感謝。

最新刊「怠ける権利」高文研

http://www.koubunken.co.jp/book/b371637.html

———————————————————————-

2022年01月21  神網<ジンネット>読書人 

評者: パーソナリティ:明石健五(「週刊読書人」編集長)

https://voicy.jp/channel/1917/265669